黄金色の身体で、手に宝の器を持つ。宝生如来(ほうしょうにょらい)は、密教(みっきょう)の五智如来(ごちにょらい)のひとりで、「宝を、生み出す」という名前を持つ、南方の仏さまです。名前だけ聞くと、金運の仏さまのように思えますが、その教えの中心は、もっと深いところにあります。
この記事では、宝生如来がどんな仏さまなのか、名前の意味、五智如来の中での役割、姿や手の形、ご利益や真言、会える場所までを、やさしい言葉で整理します。宗派によって考え方が分かれるところは、分かれることも含めてお伝えします。
宝生如来とは?名前の意味と、南方の「平等」の仏

宝生如来は、如来(にょらい)のひとりです。如来とは、悟り(さとり)を開いた仏さまのことです。
名前は、サンスクリット語の「ラトナサンバヴァ」を、漢字に訳したものです。「ラトナ」は「宝」、「サンバヴァ」は「生まれる」という意味で、「宝を、生み出す者」 となります。
ここでいう「宝」は、お金や物だけではありません。「与える心」や、「すべてを平等に見る智慧(ちえ)」 といった、心の豊かさを指す、と説明されます。
宝生如来は、密教の五智如来(ごちにょらい) のうち、南方 を担当します。象徴する智慧は、平等性智(びょうどうしょうち) です。これは、「自分と他人、良いと悪い、といった区別にとらわれず、すべてを、等しく見る智慧」とされます。
ざっくり言うと
- 宝生如来は、南方にいる如来。名前の意味は「宝を生み出す者」
- 五智如来のひとりで、「平等性智」を象徴する
- 黄金色の身体で、手を差し出す「与願印(よがんいん)」が特徴
- 「与える心」や、心の豊かさを表す
- 金運や、豊かさを願う信仰でも、知られる
与願印と宝の器|宝生如来の姿と持ち物
宝生如来の姿には、次のような特徴があります。
| 特徴 | 意味 |
|---|---|
| 黄金色の身体 | 豊かさと、満ち足りた心 |
| 右手を下げて、手のひらを見せる(与願印(よがんいん)) | 「願いを、聞き入れる」「与える」という姿 |
| 宝珠(ほうじゅ)や、宝の器を持つ姿 | 心の豊かさ、尽きない恵み |
| 蓮華座(れんげざ)に座る | 清らかな、悟りの境地 |
| 宝冠(ほうかん)や飾りをつける姿(密教の場合) | 密教の如来としての姿 |
与願印 は、右手を下に向けて、手のひらを前に出す、手の形です。「あなたの願いを、聞き入れて、与えましょう」という意味で、多くの仏像に見られます。
五智如来と宝生如来|平等性智とは
宝生如来は、金剛界(こんごうかい)曼荼羅(まんだら)の、五智如来のひとりです。五智如来は、それぞれ、方角と、智慧を担当します。
| 方角 | 如来 | 象徴する智慧 |
|---|---|---|
| 中央 | 大日如来(だいにちにょらい) | 法界体性智(ほっかいたいしょうち) |
| 東 | 阿閦如来(あしゅくにょらい) | 大円鏡智(だいえんきょうち) |
| 南 | 宝生如来 | 平等性智(びょうどうしょうち) |
| 西 | 阿弥陀如来(あみだにょらい) | 妙観察智(みょうかんざっち) |
| 北 | 不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい) | 成所作智(じょうしょさち) |
平等性智 は、「すべてを、等しく見る智慧」です。人はどうしても、「あの人は好き」「この人は苦手」と、線を引いてしまいます。しかし、宝生如来の智慧は、そうした線を、いったん置いて、すべてのいのちを、等しく大切にする ことを教えてくれます。
「与える」ことで、豊かになる|宝生如来の考え方
宝生如来の「宝」は、「もらうもの」ではなく、「与えるもの」 として説かれるのが、特徴です。
仏教では、見返りを求めずに、与える行いを、「布施(ふせ)」と呼びます。布施は、お金や物だけでなく、笑顔や、やさしい言葉、時間、手助けなど、誰にでも、できる形があります。
宝生如来は、この「布施の心」を、大切にする如来 と受け止められています。「与えることで、自分の心も、満たされる」という、考え方です。
金運を願う気持ちも、もちろん、自然な気持ちです。そのうえで、「豊かさとは、何だろう」と、少し立ち止まって考えてみる。宝生如来は、そのきっかけを、くれる存在と言えます。
宝生如来のご利益|豊かさ・平等の心・福徳
宝生如来のご利益として、よく語られるのは、次のようなことです。
- 福徳・豊かさ:心も、暮らしも、満ち足りるように
- 金運・財運:「宝を生む」という名前から
- 平等の心:分け隔てなく、人と向き合う
- 与える心:布施の精神を、育てる
- 南方の守護:五智如来の、南の仏として
ご利益の言葉は、暮らしを見つめ直すきっかけとして、受け止めてください。宝生如来は、「富を、約束する仏さま」というより、「豊かさの本質を、教えてくれる仏さま」と、受け止めてみてください。
たとえば、今日、誰かに、感謝の言葉を、ひとこと伝えてみる。それだけでも、与える側の心が、ふっと満たされる、という声があります。
宝生如来と他の五智如来・薬師如来との違い
宝生如来は、他の如来と比べると、個性が分かります。
| 仏さま | 特徴 | 宝生如来との違い |
|---|---|---|
| 阿閦如来(あしゅくにょらい) | 東方。怒りに動じない | 宝生は南方。「与える心」と、平等の智慧 |
| 阿弥陀如来(あみだにょらい) | 西方。極楽浄土の仏 | 宝生は、密教の五智如来の一員 |
| 不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい) | 北方。成し遂げる智慧 | 宝生は「平等」。不空成就は「実行」 |
| 大日如来(だいにちにょらい) | 中央。宇宙そのもの | 宝生は、大日如来の智慧の、一つの側面 |
宝生如来の真言と、梵字(タラーク)の意味
真言(しんごん) は、仏さまの働きを短い言葉に込めたものです。宝生如来の真言は、一般に次のように伝えられています。
おん あらたんのう さんばばん たらく
「あらたんのう」は、「宝」を意味する言葉に、対応するとされます。読みや書き方が、資料によって少し違う場合があります。
梵字(ぼんじ) とは、古代インドの文字のことです。仏さまごとに、対応する一文字が「種子(しゅじ)」として使われます。宝生如来の梵字は、「タラーク」が使われることが多いとされます(流派によって異なります)。
真言の唱え方は、宗派によって異なります。教わった方法がある方は、それを大切にしてください。
宝生如来の縁日と、干支の守り本尊
宝生如来の縁日(えんにち)は、広く知られた決まった日は、はっきりしていません。お寺ごとに、行事の日が違います。予定を立てる前に、案内を確認しましょう。
宝生如来は、十二支ごとの「守り本尊(まもりほんぞん)」(生まれた年の干支で決まる、自分を守る仏さま)の、八体には、含まれていません。
宝生如来を訪ねる前に知っておきたいこと
宝生如来は、密教の寺院で、「五智如来」のひとりとして、祀られることが多い仏さまです。
| 場所 | 名前 | 特徴 |
|---|---|---|
| 京都 | 東寺(とうじ)講堂 | 五智如来の像が並ぶ。宝生如来も、南方の仏として祀られる |
| 和歌山 | 高野山(こうやさん) | 空海が開いた聖地。密教の曼荼羅の世界が、体感できる |
宝生如来は、単独で祀られることは、少なく、多くは、大日如来を中心にした、五智如来の一員として、見ることになります。お出かけ前に、お寺の案内で、公開の状況を確認してください。
お参りのしかた:拍手は打たず、胸の前で手を合わせ、軽く一礼します。境内では静かに過ごし、撮影や拝観のルールは、案内に従いましょう。
宝生如来に心を寄せる、今日からできる習慣
宝生如来は、「豊かさについて、考えたい時」に、静かに心を向けたい仏さまです。日々の中で、次のことから試してみましょう。
| 行い | 意味 | おすすめの人 |
|---|---|---|
| 「ありがとう」を、一日に三回、意識して伝える | 与える心を、育てる | 感謝を、口にしそびれている人 |
| 手持ちの物の中で、「もう使わない物」を、誰かに譲る | 布施の心を、暮らしに取り入れる | 物が、増えている人 |
| 人を、好き嫌いで判断していないか、振り返る | 平等性智を、意識する | 人間関係で、悩んでいる人 |
| 黄色や金色のものを、身近に置く | 豊かさの色を、日常に取り入れる | 気持ちが、沈みがちな人 |
| 「今あるもの」を、五つ書き出す | すでに、満ちていることに気づく | 足りないものばかり、見てしまう人 |
宝生如来のQ&A|気になる疑問にお答えします
Q. 宝生如来は、金運の仏さまですか?
「宝を生む」という名前から、金運や財運を願う人もいます。ただ、仏教でいう「宝」は、物やお金に限らず、心の豊かさも、含むとされます。ご自身の願いに、合わせて、手を合わせてください。
Q. 五智如来は、どこで見られますか?
京都の東寺の講堂などで、五智如来の像を、見ることができます。公開の状況は、変わることがあるので、お出かけ前に、お寺の案内を確認してください。
Q. 与願印は、他の仏さまも結びますか?
はい。阿弥陀如来や、観音菩薩など、多くの仏さまが、与願印を結びます。宝生如来の与願印は、「宝を、与える」姿として、特に印象的です。
オラクルカードで宝生如来が出た時のメッセージ
オラクルカードなどで「宝生如来」が出た時に、よく読まれるメッセージです。
- 与える時:小さな親切が、自分の豊かさに変わる
- 平等に見る:線引きを、いったん手放す
- すでに、満ちている:今あるものに、目を向ける
- 豊かさは、心から:足りないと感じた時こそ、感謝を
カードの読み方は、デッキや読み手で変わります。ここに挙げたのは、よく見かける解釈の一つです。
まとめ|与えることで、心が満ちる
宝生如来は、宝を生み出し、すべてを平等に見る、南方の如来です。豊かさの本質は、「与える心」にある、という教えは、日々の暮らしにも、そっと生かせます。まずは今日、誰かに「ありがとう」を、一言伝えてみましょう。
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