日々のことに追われて、自分がどこまで歩いてきたのか、見えなくなる。そんな時に名前を思い出す人の多い天使がいます。ユダヤ教の神秘思想で「天の書記」と呼ばれ、もとは人間だったとされる、メタトロンです。
メタトロンは、聖書の本文にはほとんど出てこず、ラビ文献や、後世の神秘文書で語られる存在です。ここでは、その根拠となる資料を整理し、「メタトロンキューブ」や「メタトロン検査」との混同を避けるための、区別も紹介します。
メタトロンとはどんな天使?名前の意味と読み方

メタトロン(Metatron)は、ラビ文献(ユダヤ教の指導者たちの書いた文書)や、カバラなどの神秘思想に登場する、高位の天使です。神の玉座のすぐ近くに仕え、天の書記として、人の行いを記録する、と語られます。
名前の語源は、確定していません。 ギリシャ語で「玉座の後ろ」を意味する言葉に由来する、という説や、「案内する者」を意味するラテン語(メタトル)との関係を指摘する説、アラム語の「見張り」との関係を指摘する説がありますが、決着はついていません。ミカエルやガブリエルのように、語尾が「エル」でない点も、特徴のひとつです。
要点まとめ
- ユダヤ神秘思想で「天の書記」と呼ばれる高位の天使
- 名前の語源は諸説あり、確定していない
- 『創世記』のエノクが、天使になった姿とする伝承がある(第三エノク書)
- 「若者」とも呼ばれる
- 「メタトロンキューブ」や、健康機器の「メタトロン」とは、別の話
- 九階級とは別格の存在として語られることが多い
メタトロンの特徴と役割|エノクは天使になったのか
『創世記』5章24節は、エノクについて「神とともに歩んだ。神が取られたので、いなくなった」とだけ記します。この短い記述が、後の時代に、大きな物語へ広がりました。
- 『創世記』:メタトロンという名前は、出てきません
- 『第三エノク書』(ヘブライ語のヘカロット文書の一つ):ラビ・イシュマエルが天へ上り、メタトロンと出会います。メタトロンは、かつて人間エノクだったこと、天上で体が火や光のような姿に変えられたことを語ります
- タルムード(ユダヤ教の教えをまとめた文書):ハギガー篇15aに、玉座のそばで「座って」いるメタトロンを見た人物が、天に「二つの権威」があると誤解する、という話があります
この物語で大切なのは、神と天使の区別が、強く意識されていることです。メタトロンは、神と同格ではなく、神に仕えて役目を担う存在として、語られます。
メタトロンの性格と能力|書記・案内人・「若者」
- 書記としての性格:出来事を、勝手に変えず、そのまま記録する責任を担う。功績も、過ちも、見届ける
- 「若者」という呼び名:第三エノク書で、天上に加わった時が、他の天使より遅いことと、結びつけられます。高い地位でありながら、「若者」と呼ばれる点は、経験の長さが、場によって違うことを示します
- 能力:伝承では、天の秘密を人へ伝える案内人でもあります。エノクとしての来歴が消えるわけではなく、「人だった時の歩み」も含んだ存在として描かれます
メタトロンキューブと、健康機器「メタトロン」との違い
名前が同じでも、まったく別のものがあります。
| 名前 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 天使メタトロン | ユダヤ神秘思想の、天の書記 | 伝承・文学として |
| メタトロンキューブ | 13個の円と、それを結ぶ線で作る幾何学模様(現代のスピリチュアルな紹介) | 第三エノク書までは、さかのぼれない |
| 「メタトロン」の名を使う健康関連の機器・サービス | 製品・サービスの名称 | 天使の伝承は、診断や治療の裏づけにならない |
体調に不安がある時は、機器の表示だけで判断せず、症状や経過を整理して、医療機関へ相談してください。
メタトロンの階級と、サンダルフォンとの関係
メタトロンは、九階級説の「大天使」に収まる存在ではなく、別格の天使として語られることが多い存在です。
| 比べる点 | メタトロン | サンダルフォン |
|---|---|---|
| 由来とされる人物 | エノク | エリヤ(後世の神秘思想) |
| 主題 | 記録・書記 | 祈りの取り次ぎ |
| 関係 | 兄弟のように、対で語られることがある | 同左 |
二人を「双子」と呼ぶ伝承もありますが、人間の家族と同じ、という意味ではありません。
メタトロンの色・性別・見た目
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 見た目 | 書記として、本や巻物と結びつく。第三エノク書では、火や光をまとう壮大な姿で描かれる |
| 色 | 白・金・紫などで語られることがあるが、諸説ある |
| 性別 | 人間エノクが由来とされ、男性的に語られる。天使は肉体を持たないとする考えもある |
| 読み方 | メタトロン(Metatron) |
メタトロンの数字とサイン、スピリチュアルな受け止め方
メタトロンに関わる数字として、「13」が語られることがあります。ただし、これは、メタトロンキューブの円の数から来た、現代の説明です。古い資料で、メタトロンと13を結ぶ記述は、確認できません。
サインとして語られる例と、その受け止め方です。
- 同じ名前や図形を見かける → 頭の中の整理を促す合図として
- ふと、メモを取りたくなる → 残しておきたい気持ちに気づくきっかけ
- 13を見かけた → 天使からの命令にせず、「散らかった考えを並べ直す合図」にする程度で十分
スピリチュアルな文脈では、「記録と俯瞰の天使」として、日記や振り返りに、心を向ける人がいます。
メタトロンの守護とされる分野
メタトロンの守護が語られる主題は、次のとおりです。
- 記録・日記・書く仕事:流れる日々を、書き留めたい時
- 学び直し:新しい分野で、初心者に戻る時(「若者」の呼び名から)
- 俯瞰する力:仕事や家庭の役割を、少し離れて見渡したい時
- 橋渡し:誰かの言葉を、別の人へ、正確に渡す場面
メタトロンへの祈り|書くことで向き合う
教会や寺社などで教わった祈り方がある方は、それを優先してください。記録を通して振り返る、一例です。
- 静かな場所で、ノートを開く
- 「私の歩みを見失わず、必要なことを残せますように」と、心の中で呼びかける
- 「起きたこと」「気づいたこと」「次にすること」を、一行ずつ書く
- うまくいかなかった日も、「だめだった」と評価せず、「二つのうち一つが終わらなかった」と事実で書く
- 苦しくなったら、短く終えて、閉じる
オラクルカードでメタトロンが出た時のメッセージ
一般的な読み方です。あくまで、よく見かける解釈の一つです。
- 歩みを振り返る:過去の自分を裁かず、未来の自分が読める言葉を選ぶ
- 残す時:次の人や、未来の自分に渡す情報を書く
- 俯瞰する:役割と約束を並べて、優先順位を相談する
- 初心者でいい:分からない言葉を、そのままメモしておく
メタトロンにまつわる疑問|名前の由来、エリシャ・ベン・アブヤ
Q. なぜ、エノクは、天使になったのですか?
『創世記』5章24節の「神が取られた」という表現が、のちに、「肉体のまま天に引き上げられた」と解釈され、天で特別な役割を与えられたという物語へ、広がりました。同じく、預言者エリヤも、火の戦車で天へ上げられた人物です。
Q. 「二つの権威」の話は、何ですか?
タルムードのハギガー篇15aに、エリシャ・ベン・アブヤという学者が、天に上ると、メタトロンが座って、イスラエルの功績を書いているのを見て、「天には、二つの権威があるのだろうか」と言った、という話があります。これは、メタトロンを、神と同格に扱うことへの警戒を、示す物語です。
Q. 「小さなヤハウェ」と呼ばれる、と聞きました。
タルムードのサンヘドリン篇38bに、メタトロンを、神の名を持つ者、とする言及があるとされますが、解釈には幅があります。神と同じ存在という意味ではなく、神の名を託された使者、という文脈で、読まれることが多い表現です。
Q. 「メタトロンキューブ」は、古い図形ですか?
現代のスピリチュアルな紹介で、この名前が定着した図形です。古代の資料に、「メタトロンキューブ」という呼び名があるわけではありません。図形の魅力は、それとして楽しめます。
Q. 子どもの守護天使なのですか?
「若者」という呼び名から、そう紹介する解説もありますが、資料上は、「天上に加わった時が遅い」という意味の表現で、子どもの守護天使とする根拠は、はっきりしません。
メタトロンの主題を、記録の習慣にする|続けやすい三つの型
| 型 | やり方 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 三行記録 | 「起きたこと」「気づいたこと」「次にすること」 | 長い日記が続かない人 |
| 事実と気持ちの二列 | 左に実際の出来事、右にその時の気持ち | 感情と出来事が混ざりやすい人 |
| 週の見渡し | 週末に、今週の三行を読み返し、繰り返し出る言葉を探す | 全体を俯瞰したい人 |
うまくいかなかった日は、自分への評価を書かず、事実を書きます。 「私はだめだった」ではなく、「予定した二つのうち、一つが終わらなかった」と書けば、見直す範囲が分かります。
おわりに|今日、三行だけ書いてみる
メタトロンの物語は、人だった時の歩みも含めて、その人を見届ける、という姿勢を教えてくれます。まずは今日、「起きたこと・気づいたこと・次にすること」を、三行だけ書いてみましょう。
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