何かを終えたのに、気持ちだけが次へ進めない。反対に、新しく始めたいのに、区切りがつかず日々が過ぎていく。そんな時に、「区切りの合図」の天使として名前が挙がるのが、イスラフェルです。
イスラフェルは、イスラム教の伝承で「イスラーフィール」と呼ばれる天使に結びつく名前です。ここでは、クルアーンとハディース、大英博物館の写本の一葉、エドガー・アラン・ポーの詩という、三つの資料を軸に、宗教上の役割と、文学の中の姿を、分けて整理します。
イスラフェルとはどんな天使?名前の意味と読み方

イスラフェルは、イスラム教のイスラーフィール(Isrāfīl)に結びつく名で、英字では、Israfil、Israfelなどと綴られます。日本語でも、「イスラフィル」「イスラーフィール」と書かれます。
名前の語源は、確定していませんが、ヘブライ語の「セラフィム」との関係を、指摘する説があります。中心となる役割は、終末のラッパ(角笛)を吹くことです。
先に押さえたいこと
- イスラム教で、終末のラッパを吹く天使「イスラーフィール」に結びつく
- クルアーン39章68節に、ラッパの場面があるが、吹き手の名前は書かれていない
- ハディース(預言者の言行録)に、夜の礼拝で名が挙がる
- 大英博物館に、ラッパを吹く姿を描いた写本の一葉がある
- ポーの詩『イスラフェル』では、美しい歌声の天使として描かれる
- 聖書の正典には、この名前は出てこない
イスラフェルの特徴と役割|クルアーンとハディース
クルアーン39章68節は、ラッパが吹かれると、天と地にいる者が倒れ(神が望む者は除く)、再び吹かれると、立ち上がる、と述べます。ただし、この節には、吹き手の固有名は、記されていません。「クルアーンにイスラフェルの名前と役職が、すべて書かれている」とまとめると、本文と伝承の違いが見えなくなります。
ハディース(預言者の言行録)では、『サヒーフ・ムスリム』770に、夜の礼拝で「ジブリール、ミーカーイール、イスラーフィールの主である神よ」と呼びかける祈りが、伝えられています。祈りの宛先は、天使ではなく、神です。
つまり、次のように整理できます。
| 層 | 内容 |
|---|---|
| クルアーン | ラッパの場面(吹き手の固有名なし) |
| ハディース・伝承 | 名を持つ天使としての、イスラーフィール |
| 民間の理解 | 終末のラッパを吹く天使、という一般的なイメージ |
イスラフェルの性格と能力|合図を告げる役目
宗教上のイスラーフィールは、神の命令のもとで、世界の重大な転換を告げる、厳粛な役割です。性格や能力を、人間のように論じることは、適切ではありません。
一方で、この象徴を、日常の「区切り」に重ねる読み方があります。ただし、それは、象徴的な読み替えであり、人生の節目を、宗教上の終末と同じ出来事にするものではありません。
写本に描かれたイスラーフィール|大英博物館の一葉
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所蔵 | 大英博物館(ロンドン) |
| 作品 | カズウィーニー『被造物の驚異』に由来する、ラッパを吹く天使を描いた一葉 |
| 制作 | バグダード、1375〜1425年(博物館の作品情報による)、作品番号 1963,0420,0.1 |
| 特徴 | 裏面の文章に、審判の日の角笛に関わる記述がある |
この作例から、ラッパを吹くイスラーフィールが、絵画表現の題材になってきたことが分かります。ラッパの音は、絵の中では聞こえません。人の姿勢、楽器の向き、周りの広がりから、見えない音を想像させるところが、この主題のおもしろさです。
ポーの詩『イスラフェル』|美しい声の天使
エドガー・アラン・ポーの詩『イスラフェル』では、天使は卓越した歌声を持つ存在として描かれます。天の星々がその声に聞き入り、地上の語り手は、自分と天使の表現の違いを見つめます。
| 比べる点 | 宗教上のイスラーフィール | ポーの詩のイスラフェル |
|---|---|---|
| 中心の役割 | 終末のラッパを吹く | 美しい歌声で、詩の想像力を象徴する |
| 出どころ | イスラム教の伝承 | 19世紀のアメリカの詩人の作品 |
| 注意 | 宗教的な厳粛さが背景にある | 詩の冒頭の題辞を、そのままクルアーンからの引用として紹介するのは、適切ではない(ポー研究では、セールによるクルアーン訳の序論と、それを参照したムーアの作品との関係が、説明されている) |
詩は最後に、立場を交換したらどんな歌が生まれるか、という問いへ進みます。限られた場所や条件の中だからこそ出てくる言葉がある、という視点は、創作や発信をする人にも響きます。
イスラフェルの階級と、色・性別・見た目
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 階級 | イスラム教の伝承では、四大天使の一人に数える説明もある |
| 色 | 決まった色は、確認できない |
| 見た目 | ラッパ、または角笛を吹く姿で描かれる。古い写本の挿絵にも残る |
| 性別 | 男性名として扱われることが多い。実体としての性別は、資料では定まっていない |
| 読み方 | イスラフェル/イスラーフィール/イスラフィル |
イスラフェルの数字とサイン|「二度の吹奏」
イスラフェルに、決まった数字は、資料で確認できません。クルアーンの「二度」の吹奏は、この節の描写であり、終末全体を「必ず二回だけ」と整理するかは、伝承や解釈に幅があります。
サインの受け止め方は、次のとおりです。
- ラッパや音楽が気になる → たまたま聞こえた音を、重大な決断の命令にせず、決めかねていたことを見直すきっかけにする
- 同じ名前を見かける → 今の自分の区切りを、確かめる合図
イスラフェルの守護とスピリチュアルな意味|区切りと始まり
ここからは、宗教上の役割ではなく、象徴を日常に置き換える、一般的な視点です。
| 場面 | 進め方 |
|---|---|
| 終えたのに、次へ進めない | 「終わったもの」と「まだ残っているもの」を分ける(連絡、片づけ、お礼など)。気持ちが追いつく速さまで、予定表と同じにしない |
| 「お疲れさま」ではしっくりこない | やってきたことを三つ書く。役に立った経験と、もう繰り返したくないことの、両方でよい |
| 始めたいのに動けない | 「勉強する」を、「机に本を開き、一段落読む」にする。合図を決める(短い曲の終わり、タイマー、机に道具を置く) |
| 黙っていたことを伝えたい | 「少し困っています。予定の組み方を相談したい」と、助けがほしい内容を一つ添える |
伝えたあとは、聞き手がどう受け取ったかを確かめます。「ここまでの内容で、分かりにくい点はある?」と尋ねてみましょう。
イスラフェルへの祈り|次の一文を決める時間
イスラム教の礼拝や、伝統的な祈祷を、ここで再現することはできません。信仰のある方は、ご自身の宗教の作法を優先してください。区切りを見つめる、一例です。
- 今閉じたいことを一つ、始めたいことを一つ書く
- 閉じたいことには、必要な連絡や片づけが残っていないかを添える
- 始めたいことには、明日できる最初の動作を一つだけ書く(大きすぎる場合は、さらに小さく)
- 「終えた時間を大切にしながら、次の一歩を選べますように」と、心の中で読む
- 誰かへ伝える必要があれば、日時や希望が分かる文章にしてから送る
イスラフェルにまつわる疑問|イスラーフィールとの関係、ラッパの数
Q. 「イスラフェル」は、イスラーフィールと同じですか?
イスラム教のイスラーフィールに結びつく名前として、日本語で書かれます。ヘブライ語の綴りを持つ「イスラフェル」という呼び名は、ポーの詩などを通して、英語圏で広まりました。
Q. クルアーンに、ラッパは何回吹かれると書かれていますか?
39章68節では、二度の吹奏が描かれます。ただし、終末全体の出来事をどう整理するかは、伝承や解釈に幅があります。
Q. ポーの詩の題辞は、クルアーンの引用ですか?
そのまま、クルアーンからの引用として扱うのは、適切ではありません。ポー研究の注釈で、ジョージ・セールによるクルアーン英訳の序論と、それを参照した詩人トマス・ムーアの作品との関係が、説明されています。
Q. ジブリール、ミーカーイール、イスラーフィールは、どんな順で並びますか?
『サヒーフ・ムスリム』の祈りでは、この三人の名が、並んで挙がります。天使の名前が、神に呼びかける祈りの中で、神の性質を表す言葉として使われている、と説明されます。
始まりの合図を作る
始めたい気持ちがあるのに動けない時は、決意が足りないと責める前に、最初の動作が、曖昧になっていないかを見てみます。
| 曖昧な合図 | 具体的な合図 |
|---|---|
| 勉強する | 机に本を開き、一段落読む |
| 運動する | 靴を玄関に出す |
| 連絡する | 下書きを、一行書く |
音が苦手な人は、机の上に道具を置く、予定表に印をつける、といった、目で分かる合図でもかまいません。中心にあるのは、音量ではなく、始まる時をはっきりさせることです。
おわりに|区切りを、言葉にする
イスラフェルのラッパには、宗教の厳粛な背景があり、詩には声の想像力があります。まずは今日、閉じたいことを一つ、始めたいことを一つ、書いてみましょう。
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